編み物に関するどの手芸本にも必ず登場する名前のひとつに「アラン模様」があります。編み物を始めたばかりのころ、ほかの名前はスルーしたのに、なぜかこの名前は気になりました。おそらく、アラン模様のセーターはいかにも手編みといった雰囲気があり、すごく素敵で編んでみたかったでしょう。
アラン模様とは?
アラン模様は棒針編みの模様のひとつで、縄を編んだようなパターンのこと。手編みのセーターといえばアラン模様といったイメージがありますが、「これがアラン模様です!」という厳密な決まりはありません。
定番のパターンは、大きな縄編みの左右に小さな縄編みを配置し、その左右にさらに小さな縄編みを配置するというもの。これを全体に繰り返し編み、ボリュームを出します。
大きな縄編みは「表交差編み」と「裏交差編み」を組み合わせてつくり、その左右を飾る小さな縄編みは「2目交差編み」か「3目交差編み」でつくり、その左右を飾るさらに小さな縄編みは「1目交差編み」か「2目交差編み」でつくるというのが基本のパターン。
できあがるとこんな感じです。
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アラン模様の名前の起源
このパターンがアラン模様と呼ばれている起源はアイルランドにあります。アイルランドの西部の都市、ゴールウェイの西側に浮かぶアラン諸島の漁師たちがこの模様の手編みのセーターを着ていたことから、いつしかその名で呼ばれるようになりました。
小さな島が連なるアラン諸島の主要な産業は漁業。しかもアラン諸島は主に岩盤で出来ており、海上には冷たい強風が吹きつけます。
このため、海に出る漁師(家族)が少しでも温かいようにと、防寒性の高い厚みのある模様が編まれるようになったのでしょう。
アラン模様に決まりがない本当の理由
編み物を始めたばかりのころ、なぜアラン模様にはいろんなパターンがあるのかとても気になりました。ほぼ同じパターンもあれば、まったく違うパターンもあったからです。
こんなに違うパターンなのに、なぜ同じ呼び名で呼ぶのかしら?、「アラン模様」の本来の意味は何だろう?と。
そして、アラン模様にいろんなパターンがあることには、もちろん理由がありました。
漁師が海で事故にあうと、何日を海を漂流していたため、発見された時には顔の判別ができないケースが珍しくありません。万が一、家族が海で事故にあったときに、自分の家族だとひと目で見分けられるように、家庭ごとにセーターの編み方を変えていたのです。
この話を知ったとき、アイルランドの人たちがどんな想いでセーターを編んでいたかと思うと、複雑な想いがこみ上げてきました。
「大切な人の安全を願って」
この気持ちは、全てのハンドメイド品の原点なのでしょうね。