日本の伝統的工芸品のひとつで、国の重要無形文化財にも登録されている「久留米絣」。私の地元は福岡県久留米市に近く、久留米絣の産地でもあり、小学校に上がって最初の社会見学は久留米絣の工房でした。そこで今日は、地元民の目線で久留米絣について簡単にご紹介します。

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久留米絣とは?

久留米絣を知らない方もいるでしょうから簡単に説明すると、久留米絣は木綿の絣(かすり)織物です。藍染が主流で、絣糸(かすりいと)を使って濃い藍色の素地に白い模様を織り出します。

重要無形文化財に登録されている「久留米絣」にはいくつかの決まりがありますが、一般的に「久留米絣」と呼ばれているのは必ずしもこの文化財を指してはいません。

手織りでも藍以外の染料を使ったものもあれば、半自動と呼ばれる機械機(きかいばた)で織られたもの、伝統的な久留米絣の文様を洋服地用に機械で織ったものも全部ひっくるめて「久留米絣」と呼ばれています。

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久留米絣の創始者

久留米絣が創案されたのは江戸時代の後期。考えたのは当時まだ12歳だった井上伝(いのうえでん)という少女です。

着古した藍木綿が、部分的に色落ちしてまだら模様になっていたのを見て、最初から染料が付かないように糸を括っておけば、機織りで模様を織り出すことが出来るんじゃないかと考えました。

そこでその古着をほどき、解いた糸と同じように白い部分ができるように、新しい糸をくくって絣糸を作って織ったものが「久留米絣」の始まりです。

その後は次々といろんな模様が考え出され、農業が主要な産業だったこの地域で、久留米絣は農家の副業として盛んに作られ、発展しました。

「久留米絣」の認定条件

はじめにお伝えしたように、最近では「久留米絣」の名が指す織物はあまりにも幅広く、伝統的な久留米絣と同じ色と模様なら、素材が化繊であっても「久留米絣」の名で売られているほどです。

けれど、重要無形文化財などに認定されるためには、もちろん一定のルールがあります。重要無形文化財「久留米絣」の認定条件は次の3つ。

1.手括り(てくくり)による絣糸を使用すること
2.純正天然藍で染めること
3.なげひの手織り織機で織ること

【重要無形文化財の証紙】

文化財の認定条件はあまりにも厳しく、審査に通る反物はごくわずか。けれど久留米絣は文化財だけでなく国の伝統的工芸品としての認定も受けており、こちらの認定基準は文化財に比べると低くなっています。伝統的工芸品「久留米絣」の認定条件は次の5つ。

・久留米絣協同組合員による製品であること
・先染め小幅織物であること
・綿糸を原料とした手織物であること
・伝統的工芸品としてふさわしい柄であること

※もっと細かい規定がありますが、専門的な内容なのでここでは省略します。

【伝統的工芸品の証紙】

 

最後にもうひとつ、機械織りの「久留米絣」にも認定条件があります。条件は次の3つ。

・久留米絣協同組合員による製品であること
・先染め小幅織物であること
・杼(ひ)で緯糸を通すシャットル織機を用いること

【機械織りの証紙】

画像引用元:久留米絣協同組合

いずれも認定をうけた反物には添付画像の「証紙」が貼られています。
「本物の久留米絣が欲しい!」という方は、この証紙をよく確認するようにしましょう。

文化財の証紙には「重要無形文化財」の文字が、伝統的工芸品の証紙には「伝」の文字が入った金ラベルが含まれます。

ちなみに記事中の画像は、伝統的工芸品の久留米絣で作られたコースター。コースターとして使うのはもったいなくて、壁飾りにしています。